第2章 フライトまでの実際


まったく何もわからない状態から、 実際に空を飛ぶまで、どんなことをするのかを見てみましょう。

プロバイダーはA-net!
プロバイダー が 月980円!人気上昇中!


1.情報収集する
このホームページをご覧になっていること自体が、 もうすでに情報収集の第一歩と言いたいところですが、 まずあちこちのホームページを見て回ることが第一歩です。 この点、yahooでは『ハンググライダー』で検索すると、 適度の件数で一覧表示されますので、そちらをご覧下さい。 また、専門書としては、 『イカロス出版』から『SkySports』 という月刊誌が発刊されていますが、 かなり大きな書店にしか置いていませんので、取り寄せになります。 これまでに、店頭で見かけた書店としては、 大阪梅田の『紀伊国屋書店(阪急梅田駅下の1階)』と、 大阪西梅田の『ジュンク堂』の2個所だけでした。 雑誌のよいところは、エリアやショップ、スクールの一覧が 大抵掲載されていることです。



2.見学する

見学
景色のよい山頂でのんびりするだけでも心地よい

これが一番です。方法としては、 フライト場所まで自力で行って普通に見学する方法と、 ショップに連絡して見学ということで、 連れていってもらう方法になると思いますが、お勧めは後者の方です。 フライトエリアには、道路看板はまったくないため、 道順そのものや進入路が分かり難くなっていますし、 遠方であればガソリン代や高速代もばかになりません。 一方、ショップのの車に同乗したり、ショップの紹介で、 スクールやクラブ員の活動に同行させてもらえれば、 人間的な雰囲気もつかめるのでより安心です。 そして、まず、スクールを見学するか、 卒業後のクラブ員のフライト風景を見学するかですが、 やはり最初は後者でしょう。 この場合、ショップの紹介で、 クラブ員個人の車に便乗させてもらう (2000円~6000円程度の交通費の割り勘は必要ですが) 以外に、自分の車でショップまで行き、 現地へも自分の車でついて行くというパターンも気兼ねなく同行できて、 よいと思います。フライトエリアは鳥取などのように、 観光地が近くにあることも多いので、 週末のドライブを兼ねて出発から現地までだけ同行し、 観光しながら単独で帰路につくといったパターンであれば、 ハンググライダーに興味のない友人などを誘って気楽に参加できると思います。




3.スクールに入る

スクール
同じスクール生同士、すぐに仲良くなる。

実際の練習活動への一歩はスクールに入ることになりますが、 関西在住の方の場合、 大阪、京都、鳥取にある3つのスクールのいずれかあたりに入ることになります。 いずれのスクールも、 ハンググライダー好きのインストラクターによる個人営業であり、 インストラクターの人柄がそのままスクールの雰囲気といっていいでしょう。 そのスクールを卒業すると、ほとんどの場合、 自動的にそのスクールの卒業生の集まりであるクラブに所属することになりますが、 インストラクター同士がフライト仲間であるだけでなく、 クラブ間の交流もあるため、自宅に近いクラブへ転籍することもあります。

練習場所については、どのスクールも鳥取砂丘になり、 スクール期間についても同一で、 気候の関係により4月頃~11月頃となります。

ところで、関西からわざわざ鳥取砂丘まで行くのは一見無駄なようですが、 実は日本有数の練習場であり、中国・関西在住の方は大変恵まれているのです。 その理由の第一は地面が砂なので怪我をしないこと。 第二に障害物がない海辺なので、風向き、強さともに安定した海風が吹くこと。 第三に平地から小山にいたるまで、斜面にバリエーションがあり、 レベルに応じた練習場所があることなどです。

また、スクールに入るにあたっては、 いずれのスクールも体験コースといった1~2日の基礎練習コース、 (飛ぶというより、平面に近い斜面を走るイメージです)や、 体験フライト(300m程度の山から本当に飛びますが、 操縦は全てインストラクターが行います) といった2人乗りフライトも行ってくれますので、 それからスクールに入ってもよいと思います。




4.毎週末が合宿
練習パターンは、週末の土日を利用した合宿イメージになります。 スクールとしては、平日も毎日可能なのですが、 学校や、会社の都合もあるでしょうから、 やはり週末の土日が中心となります。 このため、大阪・京都からは土曜日の早朝にショップを集合して、 日曜の夜に戻るといった、1泊2日の行程となります。 交通手段としてはスクールのワゴン車に同乗するパターンが一般的ですが、 土日のどちらか1日だけ練習したい場合などでは、 片道をクラブ員のマイカーに同乗させてもらったり、 高速バスやJRを利用する手段もあり、割と何とかなりますので、 車が必需品というとはありません。 宿泊の場所はスクールにより異なりますが、キャンプをはじめ、 ショップが合宿所として借り受けているアパートや農家といった 場所になります。 いずれも無料~数千円と安価に泊まれますが、たいてい寝袋が必要です。 ちなみにスクールを卒業して、 クラブの仲間たち同士で週末のフライトに出かける場合、 テントで寝たり車で寝たりすることはごくあたりまえなので、 寝袋は必需品とも言えるかもしれません。

さて、何日ぐらい通えば山から飛べるのか? というのが気にかかるところですが、 5~10日間ぐらいは必要です。 数年前までは、20日間はたっぷりかかったのですが、 近年、練習方法も進化してきて、かなり短くなっています。 ですから、およそ月に3回程度、週末に通えば、 天気や風が悪く練習できないことを差し引いても2ヶ月前後で、 山から飛べることになります。 しかも、同期生同士での合宿中の交流自体が楽しく、 インストラクターやクラブ員からの体験談を聞くにつけて、 夢が膨らむ一方ですから、本当にあっという間の初フライトです。 特に同期の絆は、他のスポーツ同様に強いものがあります。 互いに同じ目標に向かって練習の成果を競い、合い語り合えることは、 人間の幅を広げる意味でも素晴らしいものがあることでしょう。




5.練習内容

直線飛行
まずは、地面スレスレの飛行で!

練習の大まかな流れとしては、離陸、直線飛行、着陸の練習を経て、 方向転換、高度処理(着陸に備えて旋回により高度を落とすテクニック)、 着陸のアプローチといったところです。

まず、初日の半日は、 平地でハンググライダーを担いで走ることから始まります。 幅10m、面積15㎡(ワンルームマンションぐらいの広さ)もの ハンググライダーを力任せに担いで走ると、空気抵抗で大変な力が必要です。 しかし、向かい風を真正面から受けるように担いで、ゆっくり走りはじめると、 機体の重みがふわっと無くなって、紙飛行機のように軽々と滑空しはじめます。 この、日常生活では体験することのない、 微妙な感覚をつかむことが離陸の練習につながっていくのです。

次は、ごくゆるい斜面での離陸、直線飛行、着陸の練習ですが、 最初はインストラクターやアシスタントがいっしょに付いて走ってくれ、 各操作タイミングでのアドバイスが随時あります。 つまり、それほど低い高度(約数十センチ程度)の高さでしか飛べないのです。これを繰り返し、 だんだん高い場所から離陸するようになると、そこからは単独飛行であり、 インストラクターのメガホンの指示でターン等を練習していく日々が続きます。 練習も終盤戦になると、着陸の練習がメインとなりますが、 実はこの着陸が最も難しく重要なのです。 離陸はまっすぐ走る以外にすることはなく、また、いったん上空に飛び立てば、 障害物はありません。しかし、着陸の場合は、田んぼ1つ分などの 限られた場所に降りなければならないので、進入コースをコントロールするのは もちろんのこと、通りすぎたり、とどかなかったりしないように、 進入高度も重要なのです。 ですから、単にコントロールが上手になってもだめで、 風向き、障害物、高度などを頭の中でうまく計算して進入コースを決め、 決められた場所に着陸できなければ、卒業はできません。




6.自分の機材を購入する
通常スクールの費用には 練習用の機体やその他必要なの機材のレンタル代金が含まれていますので、 自分で準備するのは、汚れてもよい(砂とたわむれる羽目になるので) ジーパンやジャンパーぐらいです。 しかし、卒業後はフライトするための機材レンタルはありませんので、 練習期間中のどこかで、自分用の機材一式を購入する必要があります。 購入時期や機材の種類、新品か中古かなどは、 インストラクターとよく相談の上で決めることなりますが、 この時、多くの人が最初に購入する機体を『一生物』 のつもりで選択しようとします。 機体の差違が実感できず、金額面でも安い買い物ではないので、 そう思うのは当然だと思いますが、 実際には、初めに購入する機体は必ず『初級機』と呼ばれる機種になり、 数年して中級機や上級機に乗り換えるパターンになります。 なぜなら、中・上級機は重量が重く、滑空比優先の設計のため操作性も悪く、 低速では離着陸できないため、 とても砂丘で練習できるような代物ではなく、 卒業後すぐに操縦できるような代物でもないからです。 一方、『初級機』は重量も軽く、低速での飛行ができるので、 少し走ればすぐ離陸でき、着陸も落ち着いてアプローチできます。 また、少々乱暴な操縦をしても失速や横滑しくい様に設計されていますので、 結果として未熟な操作によって事故を起こす確率が飛躍的に低くなります。 しかし上達するに従い、スピードや滑空比を求めるようになります。 なぜなら、より広範囲な場所へ、高度を保ったまま短時間で、 しかも向かい風でも楽々と移動していく上級機と並んで飛んでいると、 その違いをまざまざと見せつけられて、 悔しい思いをするからだと思います。 結果、上級機に乗り換えることになるわけです。



7.初フライト(卒業)
初飛び
緊張とうれしさで胸がいっぱい

めでたく卒業となると、いよいよ初飛びです。生まれて初めて、 数百メートルの山頂から自分一人で飛ぶのですから、 緊張しないほうがどうかしていると言っても過言ではありません。 しかし緊張の離陸の後は、 しばし感激の時間であることはもちろんです。 初飛びの時間帯としては、朝方や夕方が選ばれます。 風が弱く、離陸を失敗するリスク少ないためです。 インストラクターによる入念な説明を受けて離陸し、 飛行中は無線機による誘導を受けることになります。 数ヶ月もの練習をしてきた後なので、 体が基本を覚えており、まず失敗することはありません。 はた目から見ると、余裕の操作をしているといった感じを受けるほどです。 実際、離着陸に関しては、この頃が一番上手であるともいえます。 練習中は一日に何十回も離着陸をしますが、山から飛びはじめると、 1日に1~2回になるので、やはりだんだんと下手になっていくからです。




8.クラブでの活動に仲間入り
初飛びを終えると、 しばらくの間はインストラクターの無線誘導のもとでフライトすることが多いのですが、 早々にクラブ員と行動を共にすることもしばしばです。 その場合は、フライト経験数年以上のP級フライヤーにくっついて、 いろいろ教えてもらうことになります。 現実問題として、卒業したからといって、 いつでも自分一人で飛べるということにはなりません。 これは初心者だからというだけではなく、 互いに助け合ったり、分担して成り立つスポーツであるからです。 ですので、クラブ員同士で行動する場合は、初心者だからといって、 手取り足取りフライトさせてもらえるとは限りません。 機体の積み下ろし、車の廻送、 離陸に失敗して木に引っかかった機体の回収など、 雑多な段取りを共同で分担するのです。 このため、登山のように、グループで行動するのが原則であり、 さらに経験とその山での知識を持ったリーダが欠かせません。 スクールの卒業は、 ハイキング程度の小山に登ることができるようになったということであり、 その山までの交通機関の選択から始まって、入山手続きや登頂ルート、 天気や風向きに対する判断と対応、事故の対処方法にいたるまで、 ベテランの経験と知識に助けられながら、 自分がその中の一員となっていく必要があるのです。 かなり、かしこまったことを書いてしまいましたが、 同じ趣味を持った人たちの集まり。 それがクラブなのですから、もちろん楽しい付き合いになります。 仲間入りしない手はありません。



9.更なるチャレンジ
最初は飛べるだけでうれしくてたまらないのですが、 他の人と比較して、上昇できる高度に差が出てくるのを意識し始めます。 ハンググライダーには動力がないので、 『サーマル』と呼ばれる上昇風を捕らえられる人は、 1500m~2000mもの高度まで上昇でき、 数時間もの長い時間を飛行できますが、これができない人は、 300m程度の山から滑空するだけなので、 ものの5分~6分の飛行で終わってしまうからです。 時に空を見上げていると、 トンビやタカがクルクル旋回飛行しているのを見かけますが、 正に『サーマル』と呼ばれる上昇風を利用して高度を上げている姿なのです。 なぜ、クルクル回っているかというと、この上昇風は、 たき火の煙のように筒状のある一点だけの空気が上昇しており、 それ以外の場所は上昇していないからです。 しかし、自然界の上昇風は煙のように見えませんので、 これを探すことはもちろんのこと、 上昇している筒の中から外れないように旋回飛行をすることは、 簡単ではありません。 分析、考察、経験、推理、勘、操縦テクニック。 これこそハンググライダーの醍醐味であり、 100km以上もの長距離飛行を可能とする素晴らしいテクニックなのです。



10.大会に出る
大会
フライトコースを地図と写真で確認する選手達

ハンググライダーにもお祭り的なものから、 正式に競技を競う世界選手権までいろいろな大会があります。 普段の何倍もの人数のフライヤーが集まることだけでも活気があり、 楽しい気分になります。 競技方式として最も一般的のものは、飛行距離を点数化したものです。 離陸地点から半径数十キロの地域の中に10ヶ所程度の目標物 (体育館や山頂、橋など)を決め、定められた順番で飛行して、 上空から写真を撮るのです。 基本的には全部回り切れないほどの距離になるようにコースを決めますので、 より長距離、しかも短時間で飛んだ人が高得点を得ることになります。 また、別の競技としては、着陸地点の正確さを競うものや、 離陸から着陸までの経過時間を、 予め決められた経過時間とずれないように合わすことを競うものがあり、 いずれも初心者向けや、お祭り的な大会でよく行われます。 いずれの大会も、飲んだり食べたり、 しゃべったりの野外パーティーの時間があって楽しいのはもちろんですが、 普段見られないような他の人のフライトテクニックを見る機会でもあり、 興味深いものがあります。




11.フライト以外の活動
ハンググライダーの世界はまだまだ少数であるためか、 よく活動している人は、 ほとんどのフライヤーと顔見知りであるといっても過言ではありません。 このため、フライト以外での付き合いも少なくなく、 忘年会や合宿などのクラブ行事以外でも、 一緒にスキーや海水浴に出かけたり、 自営業のフライヤーが学生のフライヤーにバイトを頼んだり、 といったようなこともあります。 また、フライトのメッカが、オーストラリアやアメリカなどであるため、 海外フライトツアーや、 スカイダイビングの海外ツアーも有志により毎年企画されています。 『類は友を呼ぶ』の言葉どおり、活動的な人たちの集まりのようです。


HOME次へ(第3章 費用ガイド)